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ThinkPad L390でビデオ会議を快適に実現する方法

Surface Go 2でZoom会議

今回はThinkPad L390ノートパソコンの放熱を効率化する方法の検討です。

本件を耳にしたのは、半年くらい前のことです。Microsoft Skypeで会議している最中に、ThinkPad L390の画面が突然暗くなってしまったそうです。

その時はThinkPad L390の “緊急リセットホール” を押したら、Windows 10を再起動させることが出来たとのことです。

ほぼ間違いなくMicrosoft Skypeなどのプログラム的なバグではなく、熱が原因による暴走です。そこで今回は具体的に何が生じたかの原因究明と、その対策方法を紹介しています。

(久しぶりにパソコン迷探偵 “よつばせい” の出番)

トラブル内容

あまり他人のコメントを転用するのは宜しくないので、まずポイントを箇条書きにしてみましょう。

  1. 私が事件を耳にしたのは2020年9月25日
  2. 被害者はThinkPad L390
  3. Microsoft Skype会議中に突然画面が暗くなった
  4. その後はサーっというファンの音しか聞こえない
  5. パソコンはほんのり温かいだけ
  6. 電源ボタンを長押ししても何も変化しない
  7. 情報システム部門の助言で”緊急リセットホール”
  8. ファンが止まり、電源ボタンが利用可能になった

残念ながら事件の発生現場が自宅なのか職場なのかは不明です。時間は仕事中なので、おそらく昼間だと思われます。

被害者の日頃の生活は確認していませんが、問題があるマシンだったらば交換されていることでしょう。だからおそらく、トラブルが起こったのは当日だけの可能性があります。

被害者(ThinkPad L390)はトラブル後も仕事に無事復帰できているので、その後は特に問題が起こっていないとのことです。したがって金品目当てのマルウェアの線は無いです。

目撃者はThinkPad L390を利用していた、私の会社の先輩です。他の目撃者の存在は確認できていません。したがって目撃証言は、上記が全てです。

原因

さてここで迷探偵 “よつばせい” の出番です。

まず事件が通報されたのが9月25日ということから、現場は高温多湿だった可能性がありそうです。

また失礼ながら、目撃者は私の先輩の女性です。最近の私は新陳代謝が衰えており、体感温度への反応も鈍くなっています。つまり熱さを感じにくくなりました。彼女も同じである可能性は否定できません。

ちなみにどうでも良い話ですが、内閣官房参与の高橋洋一教授は65歳ですが、その頃に熱射病で倒れたとのことです。ご本人によると救急車で運ばれたそうなので、くれぐれも熱射病には気をつけるようにしたいです。

なお私と先輩にとっての共通の先輩、つまり大先輩が20年前にコメントしていましたけれども、大型メインフレームコンピュータと比較したらばx86系のCPUは「お粗末」とのことでした。

CPU負荷率が80%を超えると、マシンが安定動作しなくなるそうです。その一方でメインフレームは、CPU負荷率が100%でも安定して稼働するのだそうです。

以上は20年前の話ですけれども、現在にも通じる部分はあります。メインフレームが利用されるのは、基本的に止まったら新聞やニュースになるようなコンピュータシステムが多いです。

鰻に喩えるならば、東京の東西横綱とも呼ばれる、尾花や野田岩のような鰻専門店です。時間をかけて、良質な鰻を一流職人が調理しています。価格よりも品質重視です。

一方でx86系マシンも重要システムに利用されるようになりましたけれども、こちらは大量生産・大量販売がビジネスの基本です。

鰻に喩えるならば、スーパーで販売されているような鰻です。品質よりも、価格重視です。どうして日本人はこんな品質でも鰻を食べたがるのか、不思議になる位の品質です。

牛丼の「安い・早い・美味い」に喩えても、良いかもしれません。重要システムに採用されるようになったと言いましたけれども、現用/待機の2台構成のクラスタ構成にするとか、3台構成で「1台壊れても残りで継続稼働」する分散システム構成が採用されています。

ソフトウェアにしてもトライ&エラー改善のプロトタイピング的なアプローチが主流です。だからCPU負荷率が90%を越えると、動作が若干怪しくなって来ます。

というか、Intelなどのメーカも心得たもので、最近は “ターボ・ブースト機能” を実装しています。これは負荷が高くなると高熱などによって動作不安定になるので、負荷が高くなった時には自動的に性能を下げる機能です。

特にノートパソコンは、誕生した時から発熱問題/小型軽量化と性能問題のバランスに挑み続けています。電子回路なので、処理性能を高くするほど発熱量も増えます。

そのノートパソコンが、最近ではビデオ会議に利用されるようになりました。昔からノートパソコンにビデオカメラ機能を装備していたのは、Appleなどに限定されていました。

それが急にThinkPadのようなビジネス用ノートパソコンにまで装備されるようになったのです。GPU (Graphic Processing Unit) にまで負荷がかかって大変です。

そして問題を起こすのはCPUやGPUだけではありません。カメラやマイクも熱問題と無縁ではありません。だからパソコンメーカーも含めた設計的な話になって来ます。

そしてLenovoはチャレンジャーです。新しい機能を積極的に採用し、古い機能は外していきます。レッツノートなどはVGAアダプタを未だに装備しており、「日本のビジネスマン仕様」で設計・製造されています。対照的とも言えそうです。

おまけにSkypeは開発終了が決まっており、Microsoftとしても頑張って高品質なソフトウェアを開発する動機がありません。そしてビデオ会議はネットワーク経由になるので、様々な未知の事態と遭遇します。

だからCPUだけが悪いとは限りませんけれども、パソコンの熱暴走が頻発する夏季に、パソコンの各種機器に影響するビデオ会議(音声だけでもカメラ制御まで発生する)を実施して、それがMicrosoftが別ソフトウェアに切り替えようとしている最中のSkypeを使っていた訳です。

そして私の先輩は仕事熱心です。私のように会議中にボケっとすることなく、ThinkPad L390でメモ取りをしていた可能性なども考えられます。そもそもSkype会議前から、ThinkPad L390をフル稼働させていたことでしょう。

つまりプロ野球の投手が「軽く肩を温めてから試合に臨んだ」というようなものでなく、「トライアスロンでフルマラソンした後に自転車で走りだした」という状況に近そうです。会社にとっては貴重な戦力ですけれども、ThinkPad L390からすると “自分をこき使う困った持ち主” です。

さらに宜しくないのがThinkPad L390が第8世代CPUを採用した新鋭マシンであることです。私のMacbook Late 2008のような旧世代マシン(Core2Duo)はターボブースト機能が採用されていないので、ノートパソコンの底面も利用して放熱する仕掛けになっています。低温やけどしそうなほど熱くなります。

一方でThinkPad L390はCore iアーキテクチャを採用しており、パソコンの底面は放熱に利用しません。もっぱら冷却ファンの力に頼っています。そして冷却するための空気は、パソコンのあちこちからバランス良く吸収した上で、最後はCPUに接着されたヒートパイプに当てる形で廃気されています。

だからThinkPad L390は昔のノートパソコンのように、熱暴走した時でもパソコン全体がアツアツとはなりません。「ほんのりと温かい」だけでも、実は熱暴走した直後ということがあります。

しょせんはx86系製品なので、温度センサーなどのハードウェア機器も制御プログラムも量販品です。そりゃ一人一台で数千万円のノートパソコンが売れるなら、世界中の技術者がノートパソコンに携わり、あっという間に進化していくことでしょう。

なお今回の件に関しては熱暴走ですけど、実は必ずしも熱暴走とばかりは言い切れない場合もあります。CPUやGPUが高温となって、OSではなくハードウェア制御だけによって冷却ファンが駆動させられることもあります。パソコンの電源を落としても、しばらくファンが動いていることがありますね。

話をまとめましょう。

つまり今回は次のような条件が揃っていた訳です。

  • ノートパソコンが苦手な暑い季節
  • ノートパソコンをフル活用する仕事人
  • Microsoftの開発終了ソフトウェア
  • 各種機器を使用するビデオ会議
  • 新進気鋭のレノボ製品
  • 実績が豊富でないシステム構成

これらが重なってThinkPad L390内部では高温状態の部分が発生し、Windows 10どころか、ハードウェア制御プログラムまで正常動作しなくなった訳です。

そして私の先輩はベテランなので、強制電源オフのために「電源ボタンを長押し」しました。しかしこれはATXマシンの場合の操作であって、ノートパソコンはATXマシンではありません。

そこでレノボは「電源ボタンの長押し」の代わりに、「”緊急リセット・ホール” を押す」を強制電源オフ処理に割り当てました。まあ内蔵バッテリやボタン電池を取り外してコンデンサを放電させない限りは「完全電源オフ」ではない訳ですけど、ThinkPad L390には出来ない芸当です。

ちなみに我が家のMacbookはBIOS操作が出来ないので、幾つかのキーを同時に押しながら電源オンすることにより、不揮発性メモリに書き込まれたデータを工場出荷時の状態に戻すことが出来ます。

なんか “緊急リセット・ホール” というと似たような連想をしてしまいますけど、レノボの場合は「単なるいつもの強制電源オフ」に過ぎません。不揮発性メモリに書き込まれたデータを書き換えるには、幾つかのキーを押しながら電源オン操作をします。これはMacbookと共通です。

で、話を戻すと、先輩が緊急リセット・ホールを押すことにより、ともかくハードウェア制御プログラムも停止しました。そして電源オンしたら冷却ファンのフル回転が止まったということは、その時にはパソコン内部で高温部分は無くなっていたということです。

以上が今回のトラブルの原因となります。

対策方法

さて何が起こったのかと、その原因は分かりました。Microsoftのプログラムを修正するためにバグ指摘する必要があり、その方面での対応は現実的ではありません。またレノボのハードウェア制御プログラムやハードウェア部品を交換することも、現実的ではありません。

そうすると対策方法は「Skype会議中でも高温部位を発生させない」というアプローチに絞られて来ます。あとは「これをどうやって実現するか(誰が猫の首に鈴をつけるか?)」です。

方法1:ヒートシンクとうちわ

CPUやGPUに蓄熱されることが問題ならば、冷却ファン以外の方法で放熱させてやれば良い訳です。自宅であれば、パソコンに扇風機などで風を送り込むことが効率的です。

私のMacbook Pro Mid 2009のように、給気口、空気清浄機、扇風機の風ををThinkPad L390に当てるのが効果的です。

また「ほんのり」でも温かくなるのであれば、パソコンの底面にヒートシンクを敷き詰めると効果倍増するかもしれません。

しかし職場では空調は自動調整システムだし、他人との兼ね合いもあります。なかなか自宅のようには出来ません。そこでうちわを使い、ThinkPad L390に風を送り込むのです。

なんだか主従関係が逆転しているような気もしますけど、世の中はそんなものかもしれません。ともかくSkype会議から先輩が去ってしまったら、皆が困ります。あまり続くようならばx86流儀に従って「予備機も準備」です。

方法2:扇風機などの自動冷却

ThinkPad L390には幾つかの給気口があるようです。そこに対して先ほどの扇風機、給気口、エアコンの風を流し込むという方法が考えられます。

なおこの方法でも、ヒートシンクを敷き詰める価値はあります。少なくとも無駄に終わることはあっても、有害になることはありません。

ちなみに私はキーボードの上に保冷剤を置いた経験がありますけど、水滴でキーボードが使えなくなったことがあります。CPUやGPUの周辺にそよ風でも当たれば、それなりに冷却効果を期待できます。

ともかくThinkPad L390の中の空気を循環させることが大切だということです。

まとめ

以上が先輩のThinkPad L390で生じたトラブル内容とその原因です。昔も今も、熱暴走問題は生じており、対応方法に苦労します。

できれば対策方法もバッチリとしたかったですけれども、残念ながら検証環境がないので実証することが出来ません。本件の対策方法は、今年の夏に先輩が明らかにして下さることでしょう。

… できれば、もうトラブルが生じることなく、迷宮入りすることが一番ですけど。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:よつばせい